歴史と文化・巡礼の旅日記

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浜省雑談③「君が人生の時」「Home Bound」を語る【浜田省吾】

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今日は友人の「柴犬のシッポ」さんと、新橋「焼き肉ライク」で舌鼓を打った後、虎ノ門のカフェで恒例の「浜省雑談」を決行しました。

 

目白「今日は浜省5枚目のアルバム『君が人生の時』から雑談してみたいと思います」
柴犬「よろしくお願いします」
目白「このアルバムは浜省70年代最後の作品です。初期浜省のポップ路線の集大成という感じですね」
柴犬「ですね。この次の『Home Bound』で力強いロックサウンドを手に入れて、本格的に路線変更するんですね」
目白「浜省もこの時期まではバラード詩人みたいなイメージですよね」
柴犬「この時点での代表曲というと『片想い』ですから、そういう印象ですね」

柴犬「このアルバムは何と言っても、最初のヒット曲・・と言っても中ヒットくらいですけど『風を感じて』が目玉ですね」
目白「日清のカップヌードルのCMソングでしたね」
柴犬「浜省キャリアの中で珍しく『夜ヒット』などテレビ出演した時期でもありました」
目白「そもそも浜省って何でテレビ出ないんですか?」
柴犬「なんか・・長いリハに一日中付き合わされて、うんざりしたらしいんですよ」
目白「まあ当時のミュージシャンはテレビ主演拒否がデフォルトだからね。拓郎も、有名な話ですけど、テレビのリハで布施明に怒鳴りつけられて、もうテレビ出ないと決意したという話もあったし」
柴犬「この曲については色々制約も多かったようなんですよ。歌詞まで指定されたとか。カップヌードルは即席が売りだから、イージーって語は必ず入れるように言われたそうです笑」
目白「ああ、それは何かで読んだことあります。バディ・ホリーの影響もあるんですかね?It’s so easy to fall in loveみたいな笑」
柴犬「まあ、でもこの曲が売れたことによって発言権を得て、創作の自由が生まれて『Home Bound』に繋がっていくわけです」
目白「なるほど。まあ、売れなきゃ会社の言いなりになるしかないし。やっぱりこのヒットはデカかったわけですね」
柴犬「ですね」
目白「千葉美加ってアイドルが昔この曲のカバーをしてたらしくて、YouTubeで発見したので見てみたんですけど、見ました?」
柴犬「いや、見てないですね」
目白「でもあまり変わり映えしない感じだったというか。キーを変えただけって感じでしたね」
柴犬「浜省をカバーするケースってそのパターンがみんな多いんですよね。あまりイジらないんですよ、なぜか。千葉美加はB面で『幻想庭園』もカバーしてたはずですよね」
目白「らしいですね。それはネット上に上がってなかったです」
柴犬「千葉美加自体マイナーですしね」


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目白「『さよならにくちづけ』はシングルカットされましたね」
柴犬「しましたね」
目白「でもこれをシングルカットするということからも、会社側が当時浜田に求めていたイメージが分かるような気がしますね。いわゆるポップス詩人みたいな」
柴犬「ああ。ちなみに我々の友人のK氏はこの曲の歌詞を評価してましたね。『君の白い胸が震える 僕のベッド、灯りを消した夜』のところが、浜省にしては直接的なエロチックな表現だと」
目白「なるほど。まあ浜省にしてはそうかも。でも私的にはB面でシングルカットされた『ミス・ロンリーハート』の方が好きですけどね」
柴犬「これも名曲ですね」
目白「個人的にはこのアルバムの中では一番好きな曲です」
柴犬「後に『初夏の頃』でセルフカバーしていますね」
目白「私はオリジナルの方がいいな。この時点でほぼ完成されてませんか?」
柴犬「まあそうですね」
目白「ちなみに柴犬さんはこのアルバムでお気に入りは何ですか?」
柴犬「いや〜、歌謡曲好きな私としては、『青春のヴィジョン』がいいんですね」
目白「いかにも柴犬さんらしいです笑 これもシングルカットしてますね」
柴犬「してますね。でもこの歌謡ロック路線が次の『Home Bound』
に繋がっていくんですよね」

目白「『恋の西武新宿線』は愛奴のセルフカバーでしたよね」
柴犬「私は愛奴のより好きです」
目白「そうすか?私はどっちかというと愛奴のがいいんですけど。いずれにしてもアメリカン・ポップスへの素直な憧れが感じられて、気持ちが良くなる曲ですね」
柴犬「コーラス・ワークがいいですね。もともとビーチボーイズのファンでしたしね」
目白「あとフィル・スペクターもイントロで使ってますね。ダン・タタン・タ、ダン・タタン・タ🎵」
柴犬「ああ笑 『ビーマイベイビー』ですね」
目白「まさか後にカバーまですることになるとは笑 そもそも何で西武新宿線なんですかね?」
柴犬「さあ?」
目白「浜省って神奈川大学だから、多分横浜住まいだったと思うんですけど。西武線とどう関係があったんだろ?」
柴犬「誰かメンバーが住んでたんですかね?」
目白「西武線沿線は学生さんが多いから若者のイメージだったのかな?そもそも『西早稲田通り』なんて存在しないでしょ笑」
柴犬「あっ、そうなんですか」

目白「『いつかもうすぐ』は傑作カバーですね。イアン&シルビアの原曲よりいいんじゃないですか?」
柴犬「イアン&シルビアのは聞いたこと無いんですよ」
目白「あっ、そうすか。YouTubeで聞けますよ」
柴犬「今度聞いてみます」


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目白「浜省の日本語歌詞が切なくていいんですよね」
柴犬「うろ覚えなんですが、浜省の学生時代にホームステイかなんかで来日してた女の子との思い出を歌った歌だと思います」
目白「あっそうですか」
柴犬「浜省はその女の子に『ビートルズやビーチボーイズが好きだ』と話したら、『アメリカではそんな音楽は子供しか聞かない』と鼻で笑われたとか笑」
目白「撃沈ってヤツですか笑」
柴犬「その後、仲良くなったらしいんですけどね。でも帰国してしまったとか」
目白「キャリフォルニアにですね笑」

 

目白「さて次はいよいよ6枚目のアルバム。大作『Home Bound』です」
柴犬「これはロサンゼルス録音で、向こうの一流ミュージシャンを起用した会心作ですね。ここから大きくロック路線に舵を切った転機となる作品」
目白「これ、1980年の作品でしたよね。このイメチェンって、同時期のビリー・ジョエルと被る感じしませんか?」
柴犬「そうですか?」
目白「ビリー・ジョエルも初期は『ピアノマン』や『素顔のままで』の印象で、ピアノ詩人というイメージだったじゃないですか」
柴犬「確かに」
目白「それを『ビッグショット』とか『ガラスのニューヨーク』とかで攻めて、ロックンローラーの面を見せたんですよね」
柴犬「なるほど、同じ年に『グラスハウス』をリリースしてるんだ」

目白「さてこの名盤の冒頭を飾るのは、新生浜省の記念碑的作品『終わりなき疾走』です」
柴犬「まさに疾走するようなギターですね。TOTOのスティーブ・ルカサーを起用しました。ルカサーのプレイに水谷公生や町支は狂喜したそうですね笑」
目白「TOTOは日本でも既に人気でしたからねえ。私も1stから聴いてましたよ」
柴犬「80年代の職人的ギタリストとしては、ルカサーはニール・ショーンと並ぶ双璧と思ってます」
目白「今回、浜省雑談をやるにあたって1stから時系列順に聞き直して再認識しましたが、やはりこのアルバムのサウンドの厚みは歴然ですね。ちなみにこのウィンドウにギターが飾ってあった楽器店。呉市内にまだ現存してて、巡礼したことがあります笑」

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公声堂楽器店(呉市)


柴犬「以前、ブログで書いてましたね」
目白「公声堂っていうんですけど。店員のおばさんに『このお店、浜田省吾さんの歌に出てくるお店って本当ですか?』って聞いてみたんですよ」
柴犬「そしたら?」
目白「店員のおばさん『どうもそうらしいですねえ』とかちょっと拍子抜けの弱めの反応でした笑」
柴犬「あらら」
目白「地元・呉でもオラが街の英雄みたいな強力な存在ではないっぽいです」
柴犬「浜省、テレビ出ないからね。地元でもよく知らない人はいるのかも」

 

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目白「次は『東京』です。これは我々にとっては記念すべき曲です笑」
柴犬「ですね笑」
目白「昔我々が音楽と映画の同人誌を作った時に、『邦楽歴代名曲ベスト10』みたいな企画をしたんですよね。そこで何とこの曲が第1位になってしまったという笑」
柴犬「私のプッシュで笑」
目白「当時私の友人に浜省ファンは何人かいたんですが、誰一人この結果には納得しませんでした笑」
柴犬「完全な個人的思い入れでしたからね笑」
目白「確か最初に聞いた時に物凄い衝撃を受けたとか言ってましたよね?」
柴犬「そうなんですよ。私は歌謡曲好きなんですが、ハードロック好きでもあって、『東京』はそれが融合してるように感じられたんですね」
目白「いわゆる歌謡ハードロックですね」
柴犬「しかも最初に聞いた時って、『オンザロード』でのライブ版を、ラジオの雑音混じりで聴いたんですよ」
目白「ああ、臨場感が溢れますよね笑」
柴犬「もう、痺れるくらい感動してしまって」
目白「それで歴代ベスト1にしてしまったという笑」
柴犬「完全なる個人的思い入れなんですけどね笑」
目白「でも、この歌謡ハードロック路線が浜田の作風となって、後に『マネー』で完成に至るわけですよね」
柴犬「まさにそうです」
目白「ルカサーのギターがこれまた炸裂してますね」
柴犬「しかもドラムスがもたついて、ギターについて来れなくなったテイクとかあったそうなんですけど、ルカサーは面白がって敢えて録り直しさせず、もたついた箇所に複雑なフレーズをぶち込んだりしてたらしいですからね笑」
目白「すげえ笑 歌詞的には、かまやつにケチを付けられたとか本当ですかね?」
柴犬「そうらしいですね。もともとジュリーの『TOKIO』のアンサーソングとして、敢えて東京のダークサイドを描こうとしたようなんですが」
目白「でも確かにちょっと現実味が無い。『プールサイド寝そべる金持ち』とかね。社会派路線を取り入れ始めた感じですが、最初の頃はしっくりきて無かったですね」

目白「次は『丘の上の愛』です」
柴犬「ニッキー・ホプキンスのピアノが味があるんですよねえ」
目白「叙情的で美しいですよね。ちなみにwikiで読んだんですけど、ロスの丘の上に建ち並ぶ高級住宅街を見て描いたとか」
柴犬「丘の上の金持ちとか、日本だとギャグの世界ですが、格差社会のアメリカでは現実にあったんでしょうね」
目白「でも黒澤明の『天国と地獄』と重なるんですよね」
柴犬「それは自分も感じました」
目白「のちの『リッチマンズガール』に繋がる感じもありますね。『一度は金によろめいても、いつかは貧しいけれど誠実な自分のところに戻ってくる』という世界観」
柴犬「ありがちです笑」

目白「次は『あばずれセブンティーン』です。シンプルですが痛快なロックンロールに仕上がってる感じですね」
柴犬「この曲は山口百恵に提供しようとしてたんですが、採用されなかったそうですね」
目白「山口百恵?それは無理でしょ」
柴犬「まあ山口百恵もつっぱりイメージはあるから、ワンチャンあったかもですが」
目白「でも山口百恵は不良少女と言っても、横須賀のカッコいいツッパリでしょ。いくらなんでも『母さん汗かき太っちょ』とか合いませんよ笑」
柴犬「浜田にしてはユーモアを感じさせる歌詞ですよね笑」
目白「これを甲斐よしひろがカバーしてるんですよね」
柴犬「してますね。『使わないならくれ』とか言って」
目白「でも甲斐の『あばずれセブンティーン』は悪いけどイマイチでしたね」
柴犬「そうですか?」
目白「なんか安っぽいカントリーポップスみたいな感じで笑」
柴犬「私はライブ版しか聞いたこと無いんですが、そんなに悪くないと思いましたが」
目白「あと甲斐は『セックスシンボル』って歌で、この曲を真似してませんか」
柴犬「『一世紀前のセックスシンボル』ですか?」
目白「そう。頭空っぽとか歌ってましたよね笑」
柴犬「ああ、確かに。真似したのかも。同じ頃の曲でしたよね」
目白「浜田と甲斐の交流と言えば、『安奈』のギターを浜田が弾いてる話は有名ですね」
柴犬「ですね。『安奈』もちょうどこの頃の曲ですね」
目白「『安奈』はイントロのアルペジオですか?浜田が弾いてるとこって」
柴犬「それがよく分からないんですよ」

目白「次は『傷心』、これは名曲ですね」
柴犬「傑作です。私の兄貴も好きで、よく風呂で歌ってましたね」
目白「そうですか笑 これはアメリカ人ミュージシャンにも好評だったみたいですね」
柴犬「向こうにはあまりない感じの曲じゃないですか。この湿っぽさは」
目白「そうですね。日本人受けする哀愁のメロディですね。せいぜいバーティ・ヒギンズの『カサブランカ』とかぐらいかな」
柴犬「郷ひろみがカバーした曲ですね。あれはこの時期より少し後ですね」
目白「マーティ・バリンの『ハート悲しく』とかもあったな。たとえ湿っぽくても、本当にいい曲ならアメリカ人の心にも刺さるんですね」


目白「アルバムの最後を飾るのは、アルバムタイトルナンバーとも言える『家路』です」
柴犬「これも今では重要なレパートリーの一つになってますけど、発表当初の扱いは今より低かったんですよ」
目白「そうなんですか?」
柴犬「1982年に浜田は最初の武道館を演るんですけど、そのセットリストに入って無いんですよ」
目白「そうですか。あの頃はドーム球場が無かった時代ですからね。当時の武道館は一流ミュージシャンへの登竜門みたいな感じでしたよね」
柴犬「まさに。浜省としても大きな目標だった。でもそこのセットに入らなかったんですね」
目白「何ゆえ?」
柴犬「これは私の推測なんですけど。スタ録でのルカサーの圧巻のギターソロ、これを日本のミュージシャンでは再現出来なくて、外されたんじゃないかなと」
目白「ああ、なるほど」
柴犬「町支くんも味のあるプレイはするんですけど、やっぱり向こうの一流ミュージシャンと比べちゃうとね」

目白「そう言えば後に『初恋』でも歌ってましたけど、この時期ジャクソン・ブラウンやスプリングスティーンの影響で迷いから脱した!みたいなこと歌ってましたよね」
柴犬「ジャクソン・ブラウンは特に歌詞の面で影響受けてますね。もともとこのアルバムもジャクソンのバンドと録りたい希望があったそうなんですよ。実現しなかったんですけど」
目白「そうですか。曲名はスプリングスティーンっぽいのが多いですね。『終わりなき疾走』とか『明日なき世代』とか、『明日なき暴走』に似てます笑」
柴犬「このアルバムの時点では、浜田自身はスプリングスティーンにそんな興味はなかったようなんです。でもこれ以降80年代の浜田は、ファッションもスプリングスティーン化していきますからね。白いTシャツにブルージーンズ」
目白「スプリングスティーン→浜省→吉田栄作へと繋がるラインですね笑」
柴犬「あと尾崎豊もですね笑」
目白「ああ、そうか。尾崎は直系ですね」
柴犬「あと80年代の浜省の特徴ってマッチョ化したことも挙げられますね」
目白「そうなんですか」
柴犬「ライブでけっこう遠くから見ても腕の筋肉とか凄かったですよ」
目白「へえ。スプリングスティーンもマッチョでしたっけ?」
柴犬「マッチョです」
目白「影響受けたのかもしれませんね」
柴犬「日本のミュージシャンとしては、浜省が多分先駆者ですよ。長渕剛やTMレボリューションの西川なんかより早かったですから」

目白「本日はありがとうございました」
柴犬「ネクストは忘年会ですかね」
目白「ですね。次は『愛の世代の前に』と『Promised Land』あたりを語ってみたいですね」

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