歴史と文化・巡礼の旅日記

歴史と文化を訪ねる紀行ブログです。

川瀬巴水 旅と郷愁の風景【SOMPO美術館】

SOMPO美術館

新宿西口のSOMPO美術館へ、川瀬巴水(かわせはすい)展を見に行って来ました。

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川瀬巴水は大正〜昭和に活躍した浮世絵師です。新しい浮世絵版画である「新版画」の世界を確立した人物としてしられます。

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川瀬巴水は1883年、東京府芝区(現在の新橋)に生まれました。↓の絵の芝・増上寺の近くの生まれです。

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1908年、日本画家・鏑木清方の門下で画家を志しますが、なかなか芽が出ませんでした。当初は美人画を描いていましたが、鏑木門下には巴水より上手い者が山ほどいたため、路線転換の必要がありました。

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この時期、渡辺版画店の渡辺庄三郎と運命の出会いをします。「新版画」の売り出しに力を入れていた渡辺は巴水の実力を認め、風景版画を依頼するようになります。以後、巴水は頻繁に旅に出て、写生を続け、近代化の中で変わりゆく四季折々の日本の原風景を描きました。

 

川瀬巴水「池畔客室の雪 三菱深川別邸の図」

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1920年、三菱財閥から依頼され、三菱の別邸(現在の清澄庭園)を描いた連作。巴水の名が世界に知れ渡るきっかけになりました。

 

川瀬巴水「深川上の橋 東京十二題」

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1921年の連作。地元、東京の風景を詩情を込めて描きました。

 

川瀬巴水「古ま形河岸 東京十ニ題」
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巴水は「昭和の広重」ともよばれ、歌川広重と比較されることが多いのですが、広重のような「名所」ではなく、何気ない一場面を叙情豊かに表現しました。

 

川瀬巴水「月嶋の渡舟場 東京十二か月」
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これも1921年の作品。

 

川瀬巴水「雪の宮島 旅みやげ第三集」

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1923年9月、関東大震災に被災した巴水は写生帖188冊を焼失し、失意のどん底に沈みます。渡辺庄三郎に励まされ奮起した巴水は、関西に写生旅行に出かけ「旅みやげ第三集」として完成させます。巴水は日本の各地を旅行し、旅先で写生した絵を版画作品にしたため「旅情詩人」とよばれました。

 

川瀬巴水「芝増上寺 東京二十景」

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1930年、震災から復興途上の東京を主題とした「東京二十景」を描きます。ここは芝・増上寺。ちなみに震災の時、巴水一家は増上寺に避難していたそうです。

 

川瀬巴水「馬込の月 東京二十景」

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「増上寺」とこの「馬込の月」が巴水の作品の中でも最も人気が高く、多く刷られた作品だそうです。この三本松は昭和初期には失われています。

 

川瀬巴水「池上市之倉 東京二十景」

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水辺や月夜、雪景色などが巴水の好みのテーマでした。

 

川瀬巴水「上野清水堂 東京二十景」

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震災後の巴水の作品はカラフル化し、新境地を狙っていたことがうかがえます。

 

川瀬巴水「上州法師温泉」

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1933年の作品。ここは与謝野夫妻など文人たちに人気があった温泉。お湯に使っている男は巴水自身だそうです。

 

川瀬巴水「西伊豆木負」
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1937年の作品。この頃の巴水はスランプの時期と評されますが、全然いいんですけど笑

後でも触れますが、スティーブ・ジョブスも購入した作品の一つです。

 

川瀬巴水「富士之雪晴」

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1952年の作品です。忍野付近というから河口湖のあたりかな。

 

川瀬巴水「増上寺の雪」
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1953年に文部省より依頼され、「無形文化財保存記録木版画」として作成されました。42回にもおよぶ入念な摺りによって表現された作品。増上寺の前に立つ左側から二人の女性は、巴水の妻と娘だそうです。

 

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巴水は1957年、胃癌のため自宅で死去。74歳でした。

 

川瀬巴水「平泉金色堂」

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絶筆となったこの作品は、弟子らの手によって死後に完成。百日法要の場で配られました。

 

巴水は日本国内よりも、むしろ海外で高い評価を受けています。欧米では北斎、広重と並び「3H」と称されているとか。

巴水のコレクターとして知られるのが、アップル・コンピューターの創始者スティーブ・ジョブスです。

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ジョブスは10代の頃、友人の家で見た「新版画」の世界に魅せられ、やがてコレクターとなります。
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1984年発表のマッキントッシュの画面に映し出された作品は何か?
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橋口五葉「髪梳ける女」

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「新版画」の美人画で知られた橋口五葉の作品です。橋口は夏目漱石の作品の装丁もつとめました。

 

ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ「ひまわり」
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SOMPO美術館の顔がこの作品。ご存知ゴッホの「ひまわり」です。1888年作品。
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元の絵はロンドン・ナショナルギャラリーにある「ひまわり」を自ら複製して描いたものです。

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